
「んん…ふぁぁー………」
眠りから覚めた直後は伸びに限る。
この伸びによって、妙に心地の良い気分にひたりつつ
軽く眠気を覚ますのが、私の日課。
ああ、ごめんなさい。自己紹介がまだでした。
私はナナ。アイスクライマーの片割れとか言われてる方です。
…嘘です。今のは自虐ネタです。ぜひとも笑ってください。
そのほうが、精神的ダメージが小さいので。お願いします。
目が覚め、深く深呼吸。
あたりを見回しても、何もない。
…いや、家具とかはあるけど。おもしろいことがないって意味で。
「ふぅーむ…」
ため息なのか考え事なのか自分でもよくわからないセリフを口にする。
この暇をどうしたものか。
そうそう、ポポはここしばらくどっかの山で野菜でも漁ってます。きっと。たぶん。
腐れ縁が続いているのも不思議ですが、またいつか平然と戻ってくるでしょう。たぶん。
それはともかく
「どうしたもんか…」
暇を持て余してばかりでは時間がもったいない。
うーん…
…そうだ。
せっかくですから、みなさんに私の愉快な仲間…
ああ、いやいや。お友達をご紹介したいと思います。
[ピカチュウのへや]
『ROUND1 FIGHT!!』
コンコン。
ああ、このノック音がたまらない。
…じゃなくて。
「おーい、ピカりん。起きてるんでしょ」
………。
反応が無い。無視されたか?ムカツク。
『ROUND2 FIGHT!!』
ガンガン。
少し荒っぽくノックしてみた。
「おーい」
………。
またもや反応が無い。
『ROUND3 FIGHT!!』
ドゴン!
密かに練習している自慢の回し蹴りをかました。
次回のスマブラが出るなら、下スマッシュはこれに差し替えられることだろう。
そんなことを考えていても、反応は無かった。くっ…手ごわい…
そんなわけで、ROUND14に差し掛かろうとした時、
ドアが最初から空いていたと言う真相にたどりついた。
む、ムカツク…無駄な労力を朝っぱらから使わせるんじゃあない。
グイッと無駄に手首のスナップを効かせてノブをまわし、
いつものように挨拶もせずに無言で入る。
…お、いたいた。
なんだあれ。ヘッドホン…?で音楽でも聞いているのだろうか。
…ピカの耳に合うヘッドホンってすごいな。
どこのメーカーだろ。ダイソーとかじゃないよなぁ。マスド商店とかだったら、もっとイヤだなぁ…
あ、リンク先には音量に注意してね。
…いやいや、なんでもございません。
ただの独り言…いや、独り思考です。
気にすることはございません、ほんと。
そ、それはおいといて!
「おーい、ピカりん」
………。
異形のヘッドホンから聞こえてくる音楽にムチューなのか、
ちっともこっちに気づきません。
そのくせピッピカピッピカとノりにノってるのはいいですが、
人が来たことを知る手段ぐらいは用意しておきましょうピカチュウくん。
そんなピカのために、私から近づいて話しかけてみる。
…ううーん、私って親切。
「ピカり〜ん、聞こえる〜?」
「………」
親切は一蹴されてしまった。
しかし諦めずに声をかける。
「なんの音楽聞いてるんだーい?」
「………」
「おなか、ぽっこり出てますか〜?」
「………」
「…あれ?ナナ、いつのまに来てたの?」
たまたま曲と曲の合間に話が通ったのか、返事が返ってきた。
「来てたのならノックしてくれればいいのに」
「さっきから居る上、ノックしたけど気づかなかったじゃん」
「そうだった?ごめんごめん」
謝るのはいいですが、ヘッドホンを取りながらでは
謝ってる姿勢に見えねーよピカチュウくぅーん!
「いやぁ〜、実は暇でね。どうしたもんかなーと」
「こっちは暇だったから音楽聞いてたんだけど…」
ごもっともな意見が返ってきた。
「ピカりん、そこの背もたれついた椅子に座ってみ」
「ん…?うん、いいけど…?」
相変わらずミニなピカチュウに合う椅子がちっちゃくてかわいいな、くそ…
そんなことはさておいて、座ったピカチュウの眉間にビシッと人差し指をつきだす。
「この状態で立とうとしても立てないっしょ」
「この前のテレビで一緒に見たネタじゃん…」
「あ、あれ?そうだっけ」
「椅子から立とうとする時、前へ行かないといけないから
このままだと進路をさえぎられてるから立てないとか、そんな内容」
「さっすが、記憶力に定評のあるピカチュウくんですな」
「ニワトリみたいに言わないでくれる?」
私はなんだかやるせなくなり、
ピカチュウから人差し指を離して床に寝っ転がることにした。
「1人だけで暇つぶししててもしょうがないでしょ。
もうちょっとこう、赤信号。みんなで渡れば怖くない、みたいな」
「それは違法だからやめておきましょう」
「…そうです。よくできました」
ピカチュウの眉間にビシッと人差し指をつきだす。
「この状態で立とうとしても…」
「ネタをリサイクルすんな!」
盛大に怒られた。
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